「近松心中物語」などを手がけた戦後を代表する劇作家・秋元松代。1964年に発表され、秋元の最高傑作と名高い戯曲「常陸坊海尊」が、人気演出家・長塚圭史の手でよみがえり、11日(土)12日(日)、兵庫県立芸術文化センター阪急中ホール(阪急西宮北口)で上演される。
常陸坊海尊は、源義経の忠臣として弁慶らとともに都落ちし、平泉で最期を迎えた義経を見捨てて〝逃亡〟したとされる伝説の人物。400年以上を生きて、源平合戦を人々に語り聞かせたと伝わる。秋元は伝説を背景に、戦中戦後の学童疎開や人間の生と性、格差や差別などを織り込み、高度経済成長に沸く当時の社会に衝撃を与えた。戯曲の発表から半世紀。長塚は「弱い立場ゆえに追いやられ、罪を背負って生きた人々の姿は、格差社会が話題にのぼる現代に通じる」と話す。
海尊の妻と称する巫女のおばば役には演劇界の巨匠・白石加代子、おばば役の孫娘は中村ゆりが出演。津軽弁や琵琶演奏など情感豊かな演出も注目だ。長塚は「時代を超えて受け継がれる名作に親しんで」と誘う。
A席7800円、B席6千円。TEL:0798・68・0255、芸術文化センターチケットオフィス(10~17時、月曜休み)。